北京留学中、「日系デパート」へ行ってきた。
「おもてなし」といわれだして久しい。
世界に注目されるのは、それが無償で行われているからなのではないか。
「商品やサービスの代金に含まれている」のであれば、会計後に顧客はお払い箱にされる。
逆に、「おもてなしはいりません」といっても支払額が変わることなどない。
チップを払う必要すらない。
日本はなんていい国なのだろう。
中国の接客事情は、「おもてなし」慣れした日本人からすると結構つらい。
学校の売店では、サボタージュするレジ係に自分の存在を主張しないと、購入すらできない。
暇な時間帯には、ネットサーフィンに動画視聴と仕事をしていない。
こちらが「こんにちは」と声をかけて、ようやく重たげに腰を上げる。
それでも、目線はスマートフォンからなかなか切れない。
ひどい店なんか、レジ横のショーケースに腕を投げ出し寝ていたりする。
会計をしても、「ありがとう」すら言わない店すらある。
それは小さい店だからだろうと思われるかもしれないが、そんなことはない。
店が大きいだけで、同じ文化の下くらす人々である。
陳列棚の間にしゃがみ、我が物顔でスマートフォンに興じる姿を見かけるのは、珍しいことでない。
こんな風に仕事が出来たらストレスなんてないんだろうな。
怠慢に寛容な環境で働いている人たちに、羨望を覚えた。
そんな中、我が国の「おもてなし」が注目されてきたためか、「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」をいう店が出始めている。
もとからある愛想のない店と比べると、明らかに目立つ。
とくに、外資系、コンビニエンスストア等で顕著な印象がある。
高値で販売しているのだから、サービスを上げて当然といいたいが、周りの店と比べると驚異的な接客である。
無機質な接客よりも、気持ちよく「ありがとう」といえる店があるのは、おもてなし慣れしたものとしてはうれしい。
中国人はどうおもっているのだろうか。
出てこそ気づく日本のいいところのひとつは、接客の丁寧さである。
爆買いするインバウンドの中国人も同じことをおもっているかも知れない。
比べる状況にないと、なかなか気付けないものである。